【社労士が解説】消滅時効と労働時間管理
2017年の民法改正を踏まえ、労働基準法の一部改正(2020年4月1日法律施行)がおこなわれ賃金請求権などの消滅時効期間が延長されました。
消滅時効(しょうめつじこう)とは、一定期間行使されない権利を消滅させる制度のことで最も影響が大きいのが未払い残業代です。
さらに、長引く新型コロナウイルス感染症の影響から、毎日会社へ出勤し、1日8時間勤務を週5日という決まった形ではなく、三密を防ぐべく、フレックスタイム制や在宅勤務などを取り入れる企業が増える中、コロナ禍によって一部休業を余儀なくされたり、時間を短縮して稼働するなどの状況に陥っている企業も出ています。
延長の概要
現在の労働時間管理の中で未払い残業代が発生していた場合に、社員から未払い残業代を請求されリスクが顕在化すると、法改正前なら過去2年分までしか遡れなかったものが、法改正後は過去3年分まで遡れるということになり、会社から見れば請求される金額が大きくなり損失が多くなるという事になります。
例えば、未払い残業代が毎年50万円発生していた場合、法改正前では過去2年分の100万円までしか請求されなかったものが、法改正後は過去3年分の150万円まで請求されることになります。
また、裁判所が未払額と同額の付加金の支払いを命ずることができるので 最大で300万円の支払いが必要となる可能性があることになります。
未払い残業代の発生原因が、タイムカードの不正打刻や、一定の時間数まで残業代をカットするなどの場合は判りやすいのですか、会社が正しいと考えていた運用でも実は間違っていたという場合もありますので注意が必要です。
例えば、休日を労働日に変更し振替休日を同一週に与えた場合は、割増賃金は不要ですが、 翌週以降に与えた場合は1週間の労働時間が40時間を超えるので割増賃金が発生します。
消滅時効期間の延長により請求金額が増加することで、会社に対する未払い残業代の請求訴訟も増加するものと思われます。
会社は、現行の労務管理で未払い賃金が発生していないか確認し、その結果により規程や制度の変更を行い、未払い賃金の発生を抑えることが会社のリスク増大を防ぐことになります。
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※文書作成日時点での法令に基づいて執筆された記事です