【社労士が解説】労働トラブルの未然回避策(コロナウィルスと採用内定取消し)について

新型コロナウィルス感染症の影響による採用内定取消について、厚生労働省は令和2年10月20日に今年3月に大学や高等学校などを卒業して就職を予定していた人のうち、内定を取消された人の状況を取りまとめて発表しました。

新卒者に対する採用内定の取消しは、学生本人はもとより、その家族にも大きな失望を与えるものであり、国は採用したばかりの新規学卒者も雇用調整助成金の対象とする等の対策を講じていますが、現状は平成30年度に比べ大幅に増加しています。

『内定者』と言われる者の法律上の地位について整理すると次のようになります。

採用予定者』とは、単に「採用する予定である」事のみを通知している場合で、今後、入社誓約書の提出などの正式手続きが残っており労働契約成立前の者ということが出来ます。

『採用予定者』の採用内々定の取消は、労働契約成立前のことなので、労働契約の解約には該当せず『解雇』にはなりません。

但し、この解約が不当であれば、労働契約締結予約の不当な破棄として、民法上の不法行為として損害賠償責任を負うこともあります。

採用決定者』とは、入社誓約書の提出、必要書類の提出、入社前教育の開始など、採用が確定したと認められる行為があり、労働契約が締結されたと認められる者をいいます。

『採用決定者』の採用内定の取消は、労働契約の解約となり原則として解雇に該当し、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効とされます。

労働トラブルの未然回避のために、採用内定通知を出す場合は、採用内定を取消す事由を 通知しておくことが重要となります。

1 卒業できなかった場合。

2 資格取得が出来なかった場合。

3 内定者が病気やケガで就職が困難となった場合/p>

4 重大な経歴詐称が判明した場合 など

また、事業主の都合で採用内定を取消す場合は、整理解雇の4要件が適用され、これを満たさない場合は不当解雇として損害賠償を求められることも予想されます。

1 経営上の人員削減の必要性が存在すること。

2 解雇回避努力を尽くしたこと

3 人選に合理性があること

4 事前に説明協議を誠実に実施したこと

新型コロナウィルス感染症の影響など、やむを得ない事情による採用内定の取消しであっても、企業のイメージダウンにつながり訴訟リスクがあることから、採用内定取消しを回避するため最大限の経営努力を行い、採用内定者には十分に説明を行い、他の就職先の紹介や補償を用意する等の手段を講ずることが求められます。


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※文書作成日時点での法令に基づいて執筆された記事です

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